石破首相が辞任表明 歴代首相辞任時の株価動向と相場の展望

2025年9月7日、石破首相が自民党総裁として辞任を表明しました。

政権交代の節目は株式市場に少なからぬ影響を与えます。

歴代首相の辞任時、日経平均株価は翌営業日に上昇するケースが多く、政治的な期待感が投資家心理を支える傾向が見られます。

本記事では当サイトが調査した過去の事例を振り返りつつ、今後の市場展望を探ります。


目次

歴代首相辞任と株価の翌日変動

首相辞任・表明日当日終値翌営業日終値翌日騰落率
橋本龍太郎1998/7/1316,360円16,488円+0.79%
安倍晋三(第1次)2007/9/1215,797円15,821円+0.15%
福田康夫2008/9/112,834円12,609円−1.75%
鳩山由紀夫2010/6/29,603円9,914円+3.24%
菅直人2011/8/268,797円8,851円+0.61%
安倍晋三(第2次)2020/8/2822,882円23,139円+1.12%
菅義偉2021/9/329,128円29,659円+1.83%

平均は +0.86%、中央値は +0.79%。統計的に見ると、辞任翌日は上昇する例が多いことがわかります。


ケース別の詳しい検証

1998年:橋本龍太郎首相

橋本首相はアジア通貨危機と日本経済の低迷のなかで辞任を表明しました。

当時は金融システム不安が強く、失業率も上昇していました。株式市場は先行きに警戒感を持ちつつも、辞任を「政権刷新による政策転換の可能性」と捉え、翌日は小幅に上昇しました。

投資家心理としては「新リーダーへの期待」が背景にあり、短期的にはポジティブに働いたと言えます。


2007年:安倍晋三首相(第1次政権)

参院選大敗や体調悪化を理由に突然辞任。予期せぬ辞任に市場は一時混乱しましたが、当時は世界的な金融緩和局面で、投資家の資金流入が続いていました。そのため株価はほぼ横ばい。

政治不安は限定的と見なされました。

ここでは「辞任ショック」よりも「国際金融環境」の方が強い影響を持った事例です。


2008年:福田康夫首相

世界的な金融危機の直前で辞任。翌営業日の日経平均は−1.75%と下落しました。

これは政局よりもリーマンショック前夜の世界金融不安が主因です。

この事例は、「国内政治イベントの影響は世界経済の荒波にかき消される」典型例と言えるでしょう。


2010年:鳩山由紀夫首相

普天間基地問題などで政権が混乱。

辞任表明後、翌日の株価は+3.24%と大きく反発しました。

当時は菅直人氏へのバトンタッチ期待が「財政健全化や景気対策に前向き」と受け止められたことが背景。

政治刷新が市場にプラス材料と映ったことがわかります。


2011年:菅直人首相

東日本大震災後の対応をめぐり辞任。

政権への信頼感低下で株価は不安視されましたが、後継人事が円滑に進むとの見方から翌日は小幅上昇。

投資家心理としては「不安定要因の除去」による安心感が支えとなった事例です。


2020年:安倍晋三首相(第2次政権)

体調悪化による辞任表明。市場では「アベノミクスの継続性」が最大の焦点でした。

辞任当日は下落しましたが、翌営業日は反発し+1.12%。

後継に菅義偉氏が有力視され、政策継続への期待が株価を押し上げました。


2021年:菅義偉首相

新型コロナ対応への不満や支持率低下を背景に辞任を決断。

市場は「新リーダーによる選挙戦略」「経済対策への刷新」を期待し、翌営業日は+1.83%と上昇しました。

このケースは「辞任が好材料」と判断された代表例です。


歴史が示す投資家心理のパターン

過去の事例を振り返ると、大きく3つのパターンが見えてきます。

  1. 刷新期待型
    鳩山・菅義偉のように「現状打破」「新政策期待」で株価が上昇。
  2. 政策継続安心型
    第2次安倍政権の辞任のように、「後継が方針を継承する」という安心感でプラス。
  3. 外部要因優先型
    福田政権辞任のように、世界経済の大波の前では国内政治の影響は限定的。

石破首相辞任が市場に与える可能性

今回のケースも、過去のデータに基づけば「翌日は上昇しやすい」と予測できます。しかしそれはあくまで確率論。

実際には以下の要因が重要になります。

  • 後継候補の顔ぶれ
    経済政策に強みを持つ人物が総裁に就けば、金融市場は好感。
  • 米国や中国の経済動向
    金利、為替、地政学リスクなど、外部要因が優先する可能性は大。
  • 政策テーマ株の動き
    内需系や成長戦略関連(防衛、エネルギー、半導体)が買われやすい。

セクター別に見る辞任表明後の市場影響

歴代首相の辞任後、市場では単なる株価指数の動きだけでなく、業種・テーマごとに異なる値動きが観測されてきました。

今回のケースでも、後継総裁の政策スタンスや国際環境によって、以下のようなセクターに注目が集まる可能性があります。

1. 防衛関連株

地政学リスクが高まる中、防衛費増額や安全保障政策の強化は市場で関心が高い分野です。

新政権が安全保障政策を積極的に進める姿勢を見せれば、防衛関連株が買われやすい展開になるでしょう。

2. 半導体・ハイテク株

米中対立の長期化や供給網強化の流れを受け、日本国内でも半導体産業支援が政策テーマとして重視されています。

後継政権が技術投資や国内回帰を推進する姿勢を打ち出せば、半導体製造装置メーカーや素材関連企業に注目が集まりやすいです。

3. エネルギー・脱炭素関連株

エネルギー政策も政権交代時に注目される分野です。

再生可能エネルギー支援や原発再稼働の方針次第で、電力株や再エネ関連株の動きが左右されます。

特に石破首相の後継が環境政策を重視する場合、脱炭素関連銘柄への物色が強まる可能性があります。

4. 内需ディフェンシブ株(食品・通信・医療)

政権交代局面では一時的に市場が不安定化するため、投資家は安定的な収益を持つ内需ディフェンシブ株に資金を移す傾向があります。

食品、通信、医療・医薬品といった業種はリスク回避先として選好されやすいです。

5. 金融株

金融政策の継続性が焦点となるため、日銀との関係性や財政政策の方向性が示されれば銀行株・証券株に波及します。

金融緩和維持なら銀行株にはネガティブですが、景気刺激策拡大なら証券株にとってはプラス材料となります。


投資家にとっての実務的視点

  • 短期トレード狙い → 政策期待で動くテーマ株(防衛、半導体、再エネ)
  • リスク回避姿勢 → 内需ディフェンシブ株(食品、通信、医療)
  • 政策の中長期シグナル確認 → 金融株、エネルギー株

このように、首相辞任は「市場全体の期待感」だけでなく、「セクターごとの明暗」をも生み出すイベントといえます。

投資家は指数の変動に加え、どの産業が恩恵を受け、どの産業が逆風を受けるのかを見極めることが重要です。


投資家が注視すべきポイント

  1. 後継政権の政策シグナル
    金融緩和姿勢や財政政策が継続されるか。
  2. 与党総裁選の行方
    人気候補の発言次第で短期的に株価が変動。
  3. 海外マーケットの影響
    NY株や為替動向に左右されやすく、国内政治要因だけでは語れない。

まとめ

石破首相の辞任は、市場にとって「新しい期待感」を生み出す要因になり得ます。

過去の歴史が示すように、辞任翌日は上昇する確率がやや高めです。

ただし、投資判断は国内政治だけでなく、海外経済や市場環境を総合的に見る必要があります。

投資家にとっては、「後継の政策」「国際情勢」「為替動向」の三点を注視し、短期の値動きに振り回されず、中長期の視点で冷静に対応することが求められます。

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