政府が経済安全保障シンクタンク新設を検討 既存組織との違い解説

政府が、半導体や重要物資の供給網リスクに対応するため、
経済安全保障の総合シンクタンク機能を持つ新機関創設を検討しています。


既存の組織や研究機関との違いは何なのでしょうか。
本記事では、当サイトが調査した新機関の目的や役割、既存組織とのすみ分けをもとに、経済安全保障シンクタンクについて深堀りしていきます。

目次

新機関検討の背景

近年、半導体やレアアース、医薬品などの供給網は、地政学リスクや自然災害により脆弱性が浮き彫りになっています。
中国や台湾情勢、パンデミックの影響から「重要物資の確保」は安全保障上の大きな課題となりました。
こうした状況を踏まえ、政府は供給網リスクを専門的に分析する常設機関を立ち上げる必要性を認識しています。


新機関の役割と機能

新機関は「経済安保版シンクタンク」として以下の機能を担うと想定されています。

  • 各国の貿易統計や業界ヒアリング民間の航路情報を活用して供給網リスクを分析
  • 分析結果を各省庁に提供し、政策立案を支援
  • 官民協議会を運営し、企業からのフィードバックも収集
  • 友好国のシンクタンクと協力し、国際的な情報連携を推進

創設までの段階的プロセス

政府は段階的に新機関を整備する構想を描いています。

  1. 第1段階(2026年度)
     内閣府と経産省が設置予定の「重要技術戦略研究所(仮称)」を核に、NSSが司令塔として連携を推進。
  2. 第2段階
     省庁横断で情報収集・分析を行う人員と体制を強化。
  3. 将来的構想
     一部報道では、独立行政法人化も検討されているとされています。

既存の組織との違いは?

「似た役割の組織がすでにあるのでは?」という疑問は多方面から聞こえました。
そのため、主な既存組織と今回の新機関の違いについて調べて見ました。
その結果が以下の表になります。

組織名主な役割限界点新機関との違い
NSS(国家安全保障局・経済班)経済安保政策の司令塔、基本方針策定実務的な供給網分析は専門機能を持たない新機関は「分析専門」を常設で担う
経産省
(経済安保推進部局)
サプライチェーン分析、企業ヒアリング政策所掌に限定、
省庁横断ではない
新機関は横串で
各省庁を統合
内閣府
「重要技術戦略研究所(仮称)」
先端技術の研究・
分析、人材育成
技術分野に限定新機関は
供給網全般を対象
外務省・経済安保課国際連携の外交窓口国内分析は担えない新機関が
国内外の知見を集約
RIETI・JETRO政策研究や
国際経済分析
政府機微情報を
扱えない
新機関は機微データも横断的に収集可能

結論として、既存組織は部分的にカバーしているものの、横断的にデータ収集・分析を担う“総合シンクタンク”としての機能は未整備です。
新機関はその空白を埋める位置づけとなります。


国際協力の重要性

新機関は「友好国のシンクタンク」との連携も担う見込みです。
米国や欧州、台湾など半導体供給網で関係の深い国々と協力することで、情報の精度が高まり、日本単独では得られないリスク把握が可能となります。
また、国際会議や共同研究を通じて、経済安保のグローバルなルール形成にも関与することが期待されています。


読者に関係する影響

この動きは政策だけの話に留まらず、私たちの生活や企業活動にも直結します。

  • 半導体不足による家電・自動車の値上がりリスクを減らせる
  • 医薬品や燃料の供給不安を事前に察知できる
  • 企業は官民協議会を通じて、リスク情報を早めに共有可能

結果として、国民生活の安定や企業競争力の維持につながる仕組みとなります。


まとめ

政府が検討する新機関は、これまで各省庁や研究機関に分散していた経済安保の知見を一元化し、
「経済安保の頭脳」を担う存在になる可能性があります。

既存組織は部分的に役割を果たしてきましたが、サプライチェーン全般を横断的に監視・分析する常設機関は、まだ日本に存在していません。

今後、2026年度「重要技術戦略研究所」の立ち上げを起点に、段階的に拡充される計画となっています。

重要物資の供給網に対する安全確保は、私たちの暮らしの安定に直結します。
だからこそ、政府と民間、そして国際社会が連携して取り組む枠組みづくりが、いま動き始めているのです。

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